【大阪・上本町】蕎麦と日本酒で過ごす大人の時間。そば前を楽しむ「粋駒」
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ホテルの地下で過ごす大人のそば前時間
「必ずそば屋には酒あり。しかも上酒なり」——江戸末期に書かれた『江戸自慢』の一節です。当時の蕎麦屋は、質のよい酒が飲める場所でもありました。注文を受けてから打つ蕎麦は、茹で上がるまでに少し時間がかかります。その間を肴と一杯で楽しみ、最後は蕎麦で締める。江戸の人々はこれを「そば前」と呼び、粋な作法として親しんできました。
東京では通の楽しみ方として知られるそば前も、関西ではまだ馴染みの薄い言葉かもしれません。その世界を気軽に味わえるお店が、大阪上本町にあります。シェラトン都ホテル大阪の地下1階、「蕎麦と肴と一献 粋駒(いこま)」です。
駅から徒歩2分。ホテルの地下に広がるレストラン街へ
近鉄大阪上本町駅の地下改札から、ホテルへ向かうエスカレーターを上がります。少し歩けば、シェラトン都ホテル大阪の地下1階、レストランアベニュー。駅から2分ほどの道のりです。
ホテルの中、と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。けれど粋駒の店長・松本浩義さんは、この立地をこう捉えています。「ホテルの中にあるからこそ、街の喧騒から離れて、落ち着いて過ごしていただけるんです」。暖簾をくぐった先に広がるのは、和の意匠がほどこされた静かな空間でした。


店内には、カウンターのほか、ゆったりと腰を落ち着けられるテーブル席もあります。


最後に蕎麦で締める。それが一番かっこいい
蕎麦と肴と一献。店名に添えられたこの言葉のとおり、粋駒が掲げているのはそば前の世界です。

「お蕎麦とお酒を前面に打ち出しています。最後に必ずお蕎麦を食べる。ルールではありませんが、そうしていただくのが一番かっこいい。そのかっこいい体験をしてみませんか、という提案なんです」と松本さんは話します。
関西ではまだ珍しい楽しみ方だけに、松本さんには、この地で広げていきたいという思いもあるそうです。
とはいえ、いきなり通ぶる必要はありません。松本さんはこう続けます。「まずは蕎麦だけを食べに来ていただいて、店の感覚を掴んでもらえたら。そこから、だんだん一品を頼んでいただくのが一番だと思います。無理をせず、まずはどの蕎麦を食べようかな、というところから始めてもらえたら」
蕎麦だけでもいい。そう言ってもらえると、暖簾をくぐる足も軽くなります。

カウンターに腰を下ろせば、目の前で手が動いているのが見えます。蕎麦が茹で上がるまでの、わずかな時間。その間に肴をつまみ、杯を傾ける。急かされることなく、かといって長居をするわけでもない。
短く、軽く、いいものだけを——そんな過ごし方が、この店には似合います。
そば前の頼み方。まずは一杯、肴を一品
では、実際に席に着いたら、どう頼めばいいのでしょうか。
難しく考えることはありません。まずは飲みものを一杯。そして肴を一品か二品、ゆっくりと味わいます。蕎麦を注文するのは、そのあとで構いません。最後に蕎麦で締める——その流れさえ押さえておけば、あとは自由です。
肴は何を選べばよいか。松本さんにおすすめを伺いました。
まず挙げてくださったのが、蕎麦の実を使った「粋駒のポテサラ」です。「私がこの店に来てすぐのころ、どの料理を推そうかと迷って、まず自分で頼んでみたのがこれでした。変わっていて、しかも美味しい。自己主張が強いわけではないのですが、揚げた蕎麦の食感がちょうど合うんですよ」。合わせるなら炭酸系がよいとのこと。クラフトビールやハイボールと並べたい一皿です。

紀州鴨を使った「鴨低温調理」は、肉厚で旨みが濃い一品。こちらには日本酒を。「おしゃれにワインといきたいところですが、日本酒が一番合うと思います。どんなお酒が合うかな、と考える時間が一番楽しいですね」。淡麗な酒でさらりと流すもよし、濃醇な酒で味の膨らみを楽しむもよし。その日の気分で選ぶ自由があります。

定番の「板わさ」や「出し巻玉子」にも、粋駒ならではの工夫がほどこされています。店が意識しているのは、あくまで「蕎麦屋のおつまみ」であること。味付けはもちろん、サラダのドレッシングに蕎麦つゆを使うなど、随所に蕎麦らしさが忍ばせてあります。
その日ならではの一品を味わいたい方には、島根県の浜田漁港から届く天然魚を。マトウダイ(バトウ)、沖鯵、ノドグロ(アカムツ)、メダイ(ダルマ)、ケンサキイカ(白イカ)など、関西では出会う機会の少ない日本海の魚が入ることもあります。入荷情報は、Instagramのストーリーでお知らせすることがあります。
お品書きには、ほかにも季節や仕入れに応じたこだわりの一品料理が並びます。内容は折々に入れ替わりますので、訪れるたびに新しい出合いがあるはずです。そこから一品か二品、お酒を2杯ほど、最後に蕎麦で締める。これで予算は2,000~3,000円ほどが目安です。そば前は、思っているよりずっと手の届く楽しみ方なのです。
日本酒は12~15種。苦手な方にはクラフトビールを
お酒は、コロナ禍の前から付き合いのある福井の酒屋から届きます。黒龍を中心に、正規ルートでしか手に入らない銘柄も。常時12~15種ほどが揃います。
セレクトの基準について、松本さんはこう話します。「飲みやすくて、料理の邪魔をしないもの。食中酒として楽しんでいただけるものを選んでいます」。肴の味わいを引き立てながら、それだけで飲んでも美味しい一杯ばかりです。

日本酒が得意でない方には、大和醸造のクラフトビールを。自社醸造の生ビールが3種類揃います。そば前は日本酒でなければならない、という決まりはありません。

「お酒のことでしたら、気軽に私を呼んでください。お料理のことも、調理カウンターがありますので、声をかけてください」と松本さん。こんなことを聞いてもいいのだろうか——そんな遠慮は無用のようです。
締めは、やっぱり蕎麦で
そば前の締めくくりは、蕎麦です。
粋駒の蕎麦は、時期によって産地が変わります。これからの季節は北海道へ。直近までは栃木産を使い、滋賀や鹿児島のものが届くこともあるそうです。付き合いのある蕎麦粉屋が、そのとき一番美味しい産地のものを送ってくれます。新そばの便りが届けば、すぐに切り替わります。

蕎麦粉が変われば、茹で時間も変わります。そのつど見極めが必要になるのだそうです。

冷たいつゆは、だしをじっくりと煮出し、追いがつおを重ねた仕立て。返しは醤油を効かせ、甘くなりすぎないよう調整されています。打ち立て、茹でたての蕎麦を、このつゆで手繰(たぐ)る。待っていた時間が、ここで報われます。
ひとりでも、誰かと連れ立っても
夜はまだ構えてしまうという方には、ランチという選択肢もあります。粋駒は昼も営業しており、明るい時間から一杯楽しまれる方もいらっしゃるそうです。ランチのおすすめは「鴨つけ汁SOBA」と「鴨南蛮SOBA」。まずは蕎麦そのものを味わいに訪ねてみるのもよいかもしれません。


もちろん、ひとりで訪れる方も少なくありません。おひとりだからカウンターへ、と決められているわけではなく、その日の様子に合わせて席を用意してくれます。平日の夜など余裕のある日であれば、テーブル席でゆっくり過ごすこともできるそうです。
「こういうところに連れていってくださいよ、と上司に頼みに行きたくなるお店でありたいですね」と松本さん。誰かを誘う口実にするのも、また一興かもしれません。

仕事帰りに、買い物のあとに。駅から2分ほどの寄り道で、大人のそば前時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【ご利用案内】
蕎麦と肴と一献 粋駒 ~ikoma~
住所:大阪府大阪市天王寺区上本町6-1-55 シェラトン都ホテル大阪 B1F レストランアベニュー
アクセス:近鉄大阪上本町駅から徒歩約2分
電話:06-7633-8567
営業時間:11:30~14:30(L.O.14:00)/17:30~22:00(L.O.21:30)
定休日:年末年始